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大阪地方裁判所 昭和34年(ワ)195号 判決 1960年1月28日

原告

右代表者法務大臣

愛知揆一

右指定代理人検事

平田浩

法務事務官 松谷実

大蔵事務官 中川利郎

大阪市住吉区帝塚山東四丁目三七番地

被告

沢田英一

右訴訟代理人弁護士

越智比古市

右当事者間の売掛代金請求事件について、当裁判所は次のように判決する。

主文

被告は原告に対し金二七七、六七四円及びこれに対する昭和三一年一〇月一一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告において金九〇、〇〇〇円の担保を供するときは、仮にこれを執行することができる。

事実

原告指定代理人は主文第一、二項同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求原因として、

原告(所轄は住吉税務署長)は訴外沢田商事有限会社に対して昭和三一年九月二六日現在納期限を経過した昭和二七年度法人税等合計二七七、六七四円の租税債権を有しているところ、右訴外会社は昭和三〇年三月一五日被告に対し牛乳処理機一式外五点の営業用固定資産を代金五六三、五七九円支払期昭和三一年三月一五日の約定で売渡し、同年九月二六日現在金五一三、五六一円の未収代金債権を有していた。

そこで、所轄住吉税務署長は前記租税債権の滞納処分として同日右訴外会社が被告に対して有する未収代金債権を差押え、同日頃被告に対しその旨通知するとともに、これを同年一〇月一〇日までに支払うように催告した。

よつて、原告は被告に対し右未収代金債権中租税債権額金二七七、六七四円及びこれに対する右催告期限の翌日である昭和三一年一〇月一一日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

なお、被告主張の被告が右訴外会社に対し前記代金を弁済したとの抗弁事実を否認する。

と述べ、

立証として、甲第一号証を提出し、証人森下良雄の証言を援用し、乙第一ないし第四号証、第六、七号証及び同第九、一〇号証の各成立を認め、爾余の乙号各証の成立は不知と答えた。

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、

原告主張の請求原因事実中訴外沢田商事有限会社が被告に対し昭和三〇年九月二六日現在五一三、五六一円の未収代金債権を有していたとの事実はこれを否認するが、その余の事実はいずれもこれを認める。

右訴外会社は昭和二五年五月二三日設立せられたところ、経営困難となつたので、昭和三〇年三月一五日解散し、被告が清算人に就任したのであるが、同会社は右解散により、同会社の債務の弁済に当てるため、訴外神吉敏三に対し同会社の営業用固定資産の一部を代金二六七、三〇〇円で、被告に対しその余の財産である原告主張の物件を代金五六三、五七九円でそれぞれ売渡したのであつて、右訴外神吉敏三はその頃、被告は昭和三〇年四月一五日、それぞれ右訴外会社に対し前記各代金の支払を了したものである。そこで、被告は、同会社の清算人として右会社の大口債権者である株式会社片山牧場に対し買掛金六三八、五一三円九九銭中金三五〇、〇〇〇円余を、その他の債権者三名に対し金二一五、三七八円をそれぞれ支払をなし、右会社の債務を完済したのである。

ところが、原告は右訴外神吉敏三及び被告が右訴外会社からそれぞれ買受けた前記物件を同年四月一八日同会社の所有物件として同会社の原告主張の滞納法人税の滞納処分のため差押をなしたので、右訴外神吉敏三は右代金領収書を提出してこれが解除を得、被告は同年五月四日右滞納処分に対し異議の申立をなすとともに、昭和三一年二月一八日取戻請求をなしたところ、被告において右買受物件の代金を完済したことによりその所有権を取得したことを認められ、右物件の取戻を受けた次第である。

以上のように被告は右訴外会社に対し前記代金を支払済であり、原告の前記差押の目的である同会社の被告に対する債権は存在しないから、原告の本訴請求は不当である。

と述べ、

立証として、乙第一ないし第一〇号証を提出し、証人柴田哲雄、同片岡亮一及び同神吉敏三の各証言並びに被告本人沢田英一の尋問の結果を援用し、甲第一号証の成立を認めた。

理由

原告(所轄は住吉税務署長)が訴外沢田商事有限会社に対して昭和三一年九月二六日現在納期限を経過した昭和二七年度法人税等合計二七七、六七四円の租税債権を有していること、右訴外会社が昭和三〇年三月一五日被告に対し牛乳処理機一式外五点の営業用固定資産を代金五六三、五七九円支払期昭和三一年三月一五日の約定で売渡したこと、及び所轄住吉税務署長が前記租税債権の滞納処分として同年九月二六日、右訴外会社が被告に対して右売却にかかる未収代金五一三、五六一円の債権を有するものとしてこれを差押え、同日頃被告に対しその旨通知するとともに、これを同年一〇月一〇日までに支払うように催告したことはいずれも当事者間に争がないところである。

被告訴訟代理人は、被告は昭和三〇年四月一五日右訴外会社に対し前記買受代金の支払を了し、同年九月二六日現在右訴外会社に対し原告主張のような五一三、五六一円の債務を有していない旨抗弁するから、この点について審究する。

成立に争ない乙第三号証及び同第四号証並びに証人柴田哲雄の証言によれば、住吉税務署長は昭和三〇年四月一八日、被告が訴外会社から買受けた前記物件を同会社の所有物件として同会社の滞納法人税の滞納処分のため差押をなしたところ、被告が右税務署長に対し右物件は自己の所有であるとの理由で、昭和三一年二月一八日差押物件の取戻請求をなし、右請求を認容せられて右物件の取戻を受けた事実を認めることができるが、右事実のみを以ては未だ被告が右訴外会社に対し前記代金の支払を完了したとの被告の抗弁事実を認め難いとともに、証人神吉敏三の証言及び被告本人沢田英一の尋問の結果中には被告の右抗弁事実に添う各供述があるが、該各供述は右記証拠に照らしたやすく信用できないばかりでなく、他に被告の右抗弁事実を認めるに足りる証拠がない。却つて、成立に争ない甲第一号証及び証人森下良雄の証言によると、住吉税務署の徴収係をしていた訴外森下良雄が昭和三二年九月一九日、被告の訴外会社に対する右買受代金債務の調査のため被告方に赴いたところ、被告は右森下に対し前記債務の支払をしていない旨確認するとともに、翌二〇日右税務署において森下の面前で右買受代金五一三、五六一円は未払になつていることを確認する旨の債務確認書(甲第一号証)を自ら書き署名押印したのであつて、被告の右書面の作成に際しては森下は被告に対しこれを強要していない事実を認めることができ、該事実によると、被告は右日時現在において訴外会社に対し右買受代金五一三、五六一円の未払債務を負担していることが認められ、従つて被告提出の乙第五号証(領収書)の記載内容は真実に反することを記載したものと認めざるを得ない、それ故、被告の右抗弁は採用することができない。

そうすると、被告は原告に対し、右未収代金債権中前記租税債権額二七七、六七四円及びこれに対する前記催告期限の翌日である昭和三一年一〇月一一日から完済に至るまで、民法所定の年五分の割合により遅延損害金を支払うべき義務があるものといわねばならない。

よつて、原告の本訴請求は正当としてこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 入江菊之助)

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